むろや
Muroya -a private seaside retreat-


〈むろや復活物語その1〉
約20年ぶりのむろや復活には、私たち家族の想いがたくさん詰まっています。
再開までのエピソードを数回に分けてご紹介していきます。よかったらお読みいただけるとうれしいです。
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2023年8月、私(女将)の誕生日会で娘と息子が久しぶりに再会しました。
毎年夏に帰省するイギリス在住の娘は、松山在住の息子と長らく会っておらず、実に8年ぶりの再会でした。
この時、娘が息子に「家で何かしたい」と相談を持ちかけたそうです。そんな話をしていたなんて、私や夫は知りませんでした。
そもそも私たちが経営していた室屋旅館は2001年、75年の歴史に幕を閉じました。
建物の老朽化が進んだことや、しまなみ海道開通で人の流れも変わり、お客様が減っていく中で、 積極的に子どもに継いでほしいとは言えず、独り立ちした後は夫婦2人で暮らし

ていました。
また、この大きな建物を維持し続けるのは大変なため、いずれ取り壊そうと思っていました。
子どもには何度か取り壊しの話をしていたのですが、特に孫(娘の息子たち)は大反対。「こんな面白い家、壊すなんてダサい」とか。
娘は何とかしようと、帰省のたびに地元にいる友人知人たちと交流していたそうです。
そして、相談を持ちかけられた息子は「お姉ちゃんと一緒に面白いことをやりたい」と、その場で快諾しました。
息子は長年続けている仕事が安定し、子育ても落ち着いてきたタイミングだったので、何か新しいことをやりたいと思っていたそうです。
楽しい誕生日会の翌日から、再開に向けて息子はさっそく準備を始めました。そこで、私と夫は子どもたちの想いを知ることに…。
閉業の経緯もあり、当初私たちは反対でした。何度も親子で話し合いを重ね、建物の改修や設備投資の費用は娘が持ち、息子は役所への手続きやほとんどの改修作業を担当し、新たに民泊「むろや」として復活することになります。
一度辞めてしまった家業を再開するなんて、まさか想像していませんでした。
子どもたちの想いに突き動かされた私たちは、翌年夏オープンに向けて家族みんなで準備を始めていきます。
【つづく】